農家の「事業継承」問題

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農業参入コンサルタントの山下弘幸(やましたひろゆき)です。

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農業コンサルは9年目ですが、農業歴は31年です。

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また、若手農業者が農業経営、マネジメント、マーケティングなどを学べる農業ビジネススクールを主催しています。

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さて、今回のテーマは

農家の「事業継承」問題

これってかなり問題です。

なぜならば、若手農業者から多い相談の第1位がこれなんです。

先日もセミナー後質疑のコーナーがあるんですが、一番前の席にいた若手農家の方から

質問されたのが、

「親から事業継承しほしいんだけど、親とはもめたくないんです」

「もめずに事業継承してもらうにはどうすればよいでしょうか」?

んー。難しい。

なぜなら、親と子は必ずもめるから。

その方は35歳くらいで、かなり頑張っている地域でも有名な若手農家さん。

親は62歳。実質農業経営は息子である彼が中心でやっているのですが、最終決裁権は

やはり親が握っているらしい。

農業は自分で作付けや販売を自由に描いて自分の思い通りの経営をやれるのがだいご味。

中には雇われている立場の農業が好きって方もいらっしゃいますが、

親元就農される方は、早かれ遅かれ自分で経営をやるつもりで就農しています。

ですから早く自分の思い通りの農業がしたい!って思うものなのです。

この質問してくれた若手農家もその気持ちが全面に表れていました。

そこで、私はその質問にどうお答えしたかというと

「親と戦ってください」

なんだか、突き放したように聞こえるかもしれませんが、

親から事業を継承するとは

親がやってきたことをそのまま受け継ぐというニュアンスもありますが、

本当は親がやってきたことを否定しながら新しいことに挑戦することでもあるのです。

最初に難しいって言ったのは、

親と子では生まれてきた時代、育った環境、学んできたこと、付き合ってきた友達

読んだ本、影響を受けた経営者などなど全く違うからなんです。

つまり、価値観が違うのです。

その価値観が違う者同士が話し合って合意に達するにはそれ相当の理由がいります。

例えば親が体調を崩したとか、地域の役職を受けてあまり経営に加担できなくなったとか。

そうでなければその親がよほど違うことをしたいって理由で事業を譲るか、よほどこれまでの経営が苦痛だったから早く息子に譲りたいって思うか。

いずれにしても合意のもとで事業継承されるパターンは稀だと考えるべきです。

実は私の場合は事業継承する際に、かなりもめました。

私の場合は事業継承というより、事業を奪い取ったって感じでしたけど。

私が27歳の時に経営を始めました。当時父は55歳の働き盛りです。

よくそんなタイミングで事業継承できましたね?ってよく言われますが、

私は自分がやりたい農業を自分でしたい!って思いが強かったので

父に直談判したんです。

当然、父からはお前に経営なんて100年早い!って取り扱ってくれませんでした。

でも何度も何度も食い下がり、ついにはつかみ合いにまでなって、

それから家の中は最悪で、毎日険悪なムードになりました。

それでも、このままではいつまでたっても自分の思い通りの経営ができないって思って

必死に食らいつきました。

結果、親が妥協してしぶしぶ経営を譲り渡してもらいました。

本当は、親とはもめないほうが良い。

もめてまで事業継承してもらうべきか?って思いったりもします。

でも、事業継承を検討されている若手農家の方は

たとえ、もめてでも、戦ってでも早く事業を継承してください。

なぜならば、経営は経営を始めないと上手にならないからなんです。

どれだけ、経営の本を読んでも、どれだけ経営者の話を聞いても、どれだけ経営セミナーに

参加しても、実際に自分で経営を始めなければ身に付きません。

これは水泳が上手になるためにはどれだけ「水泳が上手になる本」を読んでも、「youtubeで上手に泳げる人の動画」を見ても

実際に水に入って泳ぎ始めなければ上達しないのと同じです。

そういわれても・・・・やっぱり親とはもめたくないし・・・・って

思う方もいらっしゃるでしょう。

そういう方は2つの見えない深い問題も潜んでいることに気付いてください。

その深い問題の一つ目は「学習性無力感」というもの。

あなたはサーカスの象がなぜテントから逃げ出さないか知っていますか?

驚くことにサーカスの象は細いロープでつながれているだけなんです。

ちょっと引っ張ればあの体ですから簡単にそのロープなんて引きちぎることができるのに。

実はこのサーカスの象は小さいころからこのロープにつながれて、小さいころに逃げ出そうとしたときこのロープが足に食い込み逃げ出せなかったことを記憶しているんです。

つまり、「どうせ無駄」「どうせできない」

という「やるだけ無駄」の思い込みにより、無力となってしまい、次の行動を起こせない状態になってしまうことです。

これは農家の跡取りである後継者に多い心理状態です。

特に、まじめで、子供のころから親の言う通りにしてきた人に多いようです。

どうせ、親に直談判したって即答で否定されるにきまってる。いつだてそうだった。

自分が子供のころも・・・学生の頃も・・・

っていう具合に見えないロープに結ばれて「最初からどうせ無理」ってあきらめているのでは

ないでしょうか?

このロープがあなたの行動を邪魔しています。

まずはこのロープは簡単に外せるってことに気付いてください。

これから事業を継承して経営者になろうとしているわけです。

ということは

受け身で親が事業を譲ってくれるのを待つというのはいかがなものでしょうか?

それよりも自らが経営をやるんだって積極的に経営を始めるモチベーションが

必要ではないでしょうか?

そして次に自分でブレーキをかけているのが

事業継承を親に切り出したときに切り返されるであろう「親の経験値」です。

どう考えても自分より親のほうが経験豊富で親を超える力量がないのは火を見るより明らかです。

まだ、お前には経験が足りん!って

それを親から言われるとどうしてもひるんでしまうものです。

それでも、親の経験値よりも自分のこれからのビジョンを信じて親と戦ってください。

親からしてみれば誰でもまだ子供。

ですから、あなたが描いたビジョンなんて親からすれば子供の甘いたわごとにしか

聞こえないはずです。

それでも良いのです。経営を始めてからビジョンは描き直せば。

親の経験値を気にしていたら、いつまでたっても経営権は自分に回ってきません。

そんなことを気にするより、自分が経営をやりたい気持ち。

経営権が欲しいって気持ちを優先させてください!

長くなりましたが、若手農家を応援するつもりで長文を書かせていただきました。

できればもめてほしくはないのですが、もめずにすんなりとはいかないっておもいますので覚悟を決めて、親に直談判して下さい。

でも、親ともめたからって私のせいにしないでくださいね(笑)

私はあくまであなたの背中を押しただけですから(笑)

あなたの農業経営が1日でも早く始まり、1日でも早く素敵な農業経営者になられることを陰ながら応援しております(^^♪


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